私たちは、人との関わりの中で、「こういう態度をすればこの人はこう考えるはずだ、こういう言い方をしたら相手はこう思うだろう」ということを普通に考えながら生活しています。この心の読み取りは「心の理論」に基づいていると考えられています。

 

 自閉症の方は、心の理論の獲得に問題があり、相手がどう思っているのか想像することが苦手です。相手のことを自分に置き換えて考えることが苦手なのです。


 現場でよく見かける光景を2つ挙げてみました。

 

1.自閉症の方に髪を引っ張られた

→「痛いよー、えーん💦」と泣き真似をしても自閉症の方には理解できないかもしれません。自分が髪を引っ張られたらと想像することが苦手だからです。正しい対応は、「泣き真似をして今の状況を理解してもらう」ではなく、(もしかしたら、パニックになっているかもしれないとも考えて)握った手を振り解いて早くその場を離れる、もしくは他の職員を(大声を出さずに)呼ぶです。

 事前に髪の毛をつかむ癖がある方かどうかを確認しておく事は事前準備として重要ですし、髪を束ねておく、一定の距離を保って対応するなど、正解は一つではありません。

 

2.他人を叩く

→「叩いたら痛いでしょ?」と教えても理解できないかもしれません。自分が叩かれたらと想像することが苦手だからです。なので別の方法で他人を叩くことを阻止しないといけません。特定の人を叩いてしまうなら、2人が近寄らないようにする生活上の配慮が必要となります。